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ショーケース 上野
2022.11.14 UP

【SHOWCASE UENO】#006. 山田結子 Yuiko Yamada《我々の視点・北半球 Our point of view: Northern Hemisphere》

ショーケース上野 SHOWCASE UENO
2022.11.15ー12.2

#006. 山田結子 Yuiko Yamada《我々の視点・北半球 Our point of view: Northern Hemisphere》


[コンセプト Concept]

——宇宙船の窓から現代の私たちの住む街を見たら、古代遺跡や動物の住処のように、自然の一部として観られるのではないか。そんな俯瞰的な視点を持ちたいと考えこの作品を制作しました。

鑑賞者が街に住んでいる生活に共感したり、この街の社会を想像したり、飛行機に乗った時の気持ちを思い出したり、宇宙船の窓を覗いた宇宙人の気持ちになったりと、様々な視点を持って観てもらえたらと考えます。(山田結子)——

「わたしは自分が書きたいと思うだけの大きさの四角のわく[方形]を引く。これを私は、描こうとするものを通して見るための開いた窓であるとみなそう」(レオン・バッティスタ・アルベルティ『絵画論』(三輪福松訳、中央公論美術出版、1996、p.26)

1436年、イタリア・ルネサンスの人文学者、アルベルティは『絵画論』の中で、新たな世界を見せる開いた窓として絵画を喩えました。四角い枠に沿って身のまわりの世界を切り取り、新たな視点を見せてくれる窓は、長く絵画と深い関係があると考えられてきました。だからこそ、アルベルティが「絵画=窓」と簡潔に定義して以来、数えきれないほどの芸術家たちが窓にインスピレーションを受けて作品を制作してきたのでしょう。今パッと思いつくものを挙げても、部屋の中から窓越しに外を覗く女性と悲しそうに項垂れる女性の後ろ姿が描かれたアンリ・マティス の《待つ》、フランス窓のミニチュアで、ペンキ塗りの木枠に8枚の黒い革がはめられているマルセル・デュシャンの代表的な作品《なりたての未亡人》、レアンドロ・エルリッヒの《Window and Ladder》や塩田千春の《窓の家》など…キリがないほど思い出すことができます。

今回の作品《我々の視点・北半球》もまた、ショーケースのメタリックな四角い枠を「窓」として捉えた作品です。中には緑色の人工芝の上に赤茶色の四角い住居が点在しています。そのミニチュアの街は、傾斜をもってショーケース内に展示され、上空から見下ろしているようにも感じられます。山田は四角い枠を「窓」と捉え、さらにそれを、私たちのいるこの世界を上空から見る「宇宙船の窓」に見立てたのです。本作は山田のいうように、街に住んでいる人々の生活に想いを馳せたり、宇宙船の窓を覗いた宇宙人について想像してみたり、様々な視点を持って作品を鑑賞することができます。タイトルの「我々」が誰であるのかを考えながら、その者に想いを巡らすことは「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」という問いと、なだらかに繋がっているようです。(鈴木萌夏/東京藝術大学先端表現領域博士課程)

[作家について About the Artist]

山田結子/Yuiko Yamada
東京藝術大学彫刻科学部3年
【展覧会歴】
・小平アートサイト2021(2021, 東京)
・TOKYO ART BOOK FAIR2021(2021, 東京都現代美術館, 東京)
・みんなのきもち×松永拓馬「ちがうなにか」release party(2022, 神奈川)
・見上愛主催グループ展示「re*shape*less」(2021, 新宿眼科画廊, 東京)
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