ショーケース
2024.12.02 UP
【SHOWCASE】#43. 倉敷安耶 / Aya Kurashiki《口腔間距離 / Oral distance》
ショーケース SHOWCASE directed by Ozawa Tsuyoshi
2024.12.02ー2025.1.24
#43. 倉敷安耶 / Aya Kurashiki《口腔間距離 / Oral distance》
[コンセプト Concept]
食卓とは、最小単位の、一時的な共同体である。この卓上の距離に私達の関係性は広がっている。食事をするということは食材という他者の身体を経口摂取し自身の体内に取り入れること。
ときに葬儀の際、焼かれた骨を皆で取り囲み箸で拾うときに食卓のようだと思った。故人が焼き上がるまで皆で共に食事をして待つ、それはまるで晩餐の儀の中で主菜を待つようである。現に葬送と食事の関係性は深く、多くの場合の葬儀には共食行為や死者に対して供物を捧げる行為が見受けられる。死は肉体を根源とし、生のために我々は他者を肉体に取り込み血肉とし、他者と食卓を共にすることによってエロスの喜びを分かち合う。他者との繋がりは口先から始まる。
倉敷安耶は、個々人の身体を起点として、誰にとっても身近な日常の行為を扱いながら、古くから人間によって続けられてきた儀式や物語にまで広げていく。鑑賞者は彼女の作品に自身を照らし合わせながら、人間ではない存在を含む私たちの他者との距離を想像することができる。
白いシルクのテーブルクロスに食器と燭台が並べられた親密な雰囲気の食卓がある。中央に置かれた半分のお皿は、鏡の中の虚像と繋がることで、ひとつに結ばれる。
人との距離を感知してオレンジ色の灯りがひとりでに灯る。正面の鏡、向かいの鏡、お皿の上の鏡に映る自分が見える。近づいたり離れることで、見えるものが移り変わっていく。
食べるという行為によって、他者の身体を取り込み、それは自分の一部になる。その合わせ鏡の食卓に対峙すると、お皿にのった自分自身を食べるような感覚に陥り、他者との境界が曖昧になっていく。
そして自分も、他者の一部になるかもしれない。仏具の燭台、火葬の時に使う箸などが散りばめられ、儀式を思い起こさせる。火で身体が焼かれ、箸で骨を掴んで、やがて土に埋められていくように。
この作品は、食堂を利用する人へ向けて、身近な食卓に自身を映し出すことで、食べるという行為、食卓を囲む他者との距離、その一部となる自分について、新たな視点をもたらしてくれる。
キュレーター:国際芸術創造研究科修士1年/杉本温子
[イベント Event]
[作家について About the Artist]
1993年 兵庫県生まれ。現在は東京を拠点に活動。
2018年京都造形芸術大学大学院修了。
2020年東京藝術大学大学院修了。
佐藤国際文化育英財団第26期生。
クマ財団3期生。
2021年度VIVA AWARDアソシエイツアーティスト。
http://aya-kurashiki.com/
2024.12.02ー2025.1.24
#43. 倉敷安耶 / Aya Kurashiki《口腔間距離 / Oral distance》
[コンセプト Concept]
食卓とは、最小単位の、一時的な共同体である。この卓上の距離に私達の関係性は広がっている。食事をするということは食材という他者の身体を経口摂取し自身の体内に取り入れること。
ときに葬儀の際、焼かれた骨を皆で取り囲み箸で拾うときに食卓のようだと思った。故人が焼き上がるまで皆で共に食事をして待つ、それはまるで晩餐の儀の中で主菜を待つようである。現に葬送と食事の関係性は深く、多くの場合の葬儀には共食行為や死者に対して供物を捧げる行為が見受けられる。死は肉体を根源とし、生のために我々は他者を肉体に取り込み血肉とし、他者と食卓を共にすることによってエロスの喜びを分かち合う。他者との繋がりは口先から始まる。
倉敷安耶は、個々人の身体を起点として、誰にとっても身近な日常の行為を扱いながら、古くから人間によって続けられてきた儀式や物語にまで広げていく。鑑賞者は彼女の作品に自身を照らし合わせながら、人間ではない存在を含む私たちの他者との距離を想像することができる。
白いシルクのテーブルクロスに食器と燭台が並べられた親密な雰囲気の食卓がある。中央に置かれた半分のお皿は、鏡の中の虚像と繋がることで、ひとつに結ばれる。
人との距離を感知してオレンジ色の灯りがひとりでに灯る。正面の鏡、向かいの鏡、お皿の上の鏡に映る自分が見える。近づいたり離れることで、見えるものが移り変わっていく。
食べるという行為によって、他者の身体を取り込み、それは自分の一部になる。その合わせ鏡の食卓に対峙すると、お皿にのった自分自身を食べるような感覚に陥り、他者との境界が曖昧になっていく。
そして自分も、他者の一部になるかもしれない。仏具の燭台、火葬の時に使う箸などが散りばめられ、儀式を思い起こさせる。火で身体が焼かれ、箸で骨を掴んで、やがて土に埋められていくように。
この作品は、食堂を利用する人へ向けて、身近な食卓に自身を映し出すことで、食べるという行為、食卓を囲む他者との距離、その一部となる自分について、新たな視点をもたらしてくれる。
キュレーター:国際芸術創造研究科修士1年/杉本温子
[イベント Event]
倉敷安耶「秩序を保つ ─ 熱、冷たい火」 ワークショップ
日時:12月18日(水)16:00〜18:00
会場:東京藝術大学取手キャンパス藝大食堂
参加費:無料
定員:15名
①酵素シロップをつくる
②参加者の皆で食事の準備をして食卓を囲む。
②参加者の皆で食事の準備をして食卓を囲む。
今回は共食と葬送の関係性を交えて、加熱と発酵(腐敗)など食と身体の状態にまつわるものを取り扱っていく予定です。
前半では酵素シロップを作り、後半のランチでは発酵食品や、神話や伝承に関する食材を簡単に準備し、参加者の皆様と食卓を囲みます。
前半では酵素シロップを作り、後半のランチでは発酵食品や、神話や伝承に関する食材を簡単に準備し、参加者の皆様と食卓を囲みます。
[作家について About the Artist]
1993年 兵庫県生まれ。現在は東京を拠点に活動。
2018年京都造形芸術大学大学院修了。
2020年東京藝術大学大学院修了。
佐藤国際文化育英財団第26期生。
クマ財団3期生。
2021年度VIVA AWARDアソシエイツアーティスト。
http://aya-kurashiki.com/