ショーケース
2024.05.27 UP

【SHOWCASE】#41. 荒川弘憲 / Arakawa Koken《Vermiform Object》

ショーケース SHOWCASE directed by Ozawa Tsuyoshi
2024.6.10ー7.25
#41. 荒川弘憲 / Arakawa Koken《Vermiform Object》

[コンセプト Concept]

《Vermiform Object》は、ガラスでつくられたミミズのような、あるいは腸が飛び出してしまったかのようなフォルムを持つオブジェだ。このオブジェの中には昆虫や電子部品、ネジなどの廃棄物が封入されている。
中西夏之の《Compact Object》という作品がある。身辺にあるような日用品や廃棄物が透明な卵の中に封入された作品だ。一度はこの世界に存在し、触れられるものであったそれらの事物は、卵の中に閉じ込められて触れられない。この卵からいったい何が孵化するだろうか。
日用品や廃棄物のつまった卵が何に孵るのか、このことを考えるときに、人がつくること以外の力に気を配ってみる。その力によって新たな事物が生まれるのはどのような事態なのか考える。

たとえばそれは、虫にとって電子機器の存在が、これからの虫の進化にどのような影響を及ぼしていくのかという想像に結びつく。おそらく虫は電子機器を知らないけれど、例えばこの二つが共存しているか、していないとでは虫の進化は異なるものとならないだろうか。
そこで、人が感知しにくいところで、直接的な操作は加えず世界のあらゆる存在の変化に関わる臓器のようなチューブを空想する。《Vermiform Object》は、そのような空想をオブジェ化した作品でもある。(文・荒川弘憲)

[作家について About the Artist]

荒川は内臓感覚に注目して、その感覚をアートによって表現しようとします。視覚や聴覚のみにはとらわれないで、内臓感覚に関する研究や制作をすることで、世界の内臓感覚による読み替えに取り組んでいます。
荒川の代表作である《Jmascape Breath》では、水面に呼吸によって波を生じさせて眺めを変化させる様子を一人称視点映像によって表現し、鑑賞者の呼吸や内臓と映像作品との交流を図っています。また《Jamscape Dropping Car》という映像作品では、荒川修作の「養老天命反転地」まで車で向かう様子を、地面に映し出すことで、落下していくような内臓感覚を探求しています。
https://arakawakoken.net/

 
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