ショーケース 上野
2023.10.02 UP

【SHOWCASE UENO】#010. CHEN YUXIN《wisdom tooth》

ショーケース上野 SHOWCASE UENO
2023.10.2ー11.2
#010. CHEN YUXIN《wisdom tooth》

[コンセプト Concept]

末っ子であった母が日本への単身留学を決意した時、大学の入学通知書を手に工場を飛び出した瞬間の父親、成人となる儀式は現代社会においてどのような隠れた儀式へと変わったのか? 作者にとって成人となる儀式は、独自に冒険に出る決意をした日だと考えている。この冒険が訪れる前触れは、移住の途中での自意識の覚醒かもしれない、或いは同世代の友人たちより遅れて親知らずが生える痛みかもしれない。着られなくなったサイズの服、子供の頃のように通れない公園の低木、狭く感じる部屋、これらはすべてが巣を離れる時が来たことを示唆しているかもしれない。

作者の家族はこれまで、多くの都市を転々と移り住んだ。運命と記憶が、作者が成長する遺伝子の一部を形成し、共有された記憶で伝わり、人生の道を示していると確信している。この経験が、作者にとって物質よりも、身体的な体験と精神的な成人の儀式に焦点を当てる理由である。作者は、成人の儀式は常に物質社会から自発的に生まれる精神的であり、肉体的な体験であると考えている。親知らずが抜け、赤いライティングで海岸を照らしたように月経の初潮を模倣し、亡くなった魂を偲び、新しい炎を灯す、これらを定義するため人々の顔は、激しい火花で燃える場所となった。これは単なる終わりだけでなく、新たな始まりでもある。

本作品では、火が瞬く間に消え去る様子を通じて、成長と記憶を表現している。融解する画像データの終わり部分は、将来何度も思い出されるであろう、成人式前夜の記憶のように次第に不明瞭になっていく。記憶はしばしば完璧な再現ではなくなる。現代の画像は、より高い解像度を求める中で、記憶の不完全さや記憶が薄れていく過程のランダム性を視覚的に表現することが難しくなった。作者はこの作品を通じて、この重要な人生の経験を記録し、記憶と成長を視覚化する可能性を模索したいと考えている。

[作家について About the Artist]

CHEN YUXIN
中国漢民族出身。2019年東京藝術大学修士卒業。現在、東京藝術大学先端藝術表現科博士課程在学中。日本写真協会会員。

作品集 『Buddism』、『Good old days』、『Hamlet Show』
2017年「Pride & Prejudice」Chen Yuxin +Lin Shihyen 写真双人展
2019年「Pessimist’s Bouquet」東京藝術大学修士卒業展
2020年 日中青少年写真書画交流展
2021年 東京写真月間 オリンパスギャラリー東京
2022年 第48回美術の祭典東京展 東京都美術館
2022年 都視点展vol.4 日本橋Kanonギャラリー
2023年 pod展Ⅶ 日本橋Kanonギャラリー

[展示風景 Installation View]

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